美の慟哭

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 そうこうしている内に僕達は目当ての部屋へ着き、二十人は座れるだろう一室を見渡す。もっとも僕達だからとこの広大な部屋を融通されている訳ではない。どの部屋も同じく広いのだ。 「じゃあ、待ってて? 急いで飲み物持ってくる」 「ああ、急がないでいいよ」  するとカゴからマイクを取り出していた明が斜めに首を傾げ、予想外の一撃を僕に加えた。微笑のままに走り去り、いよいよ黒の簡易エプロンが特筆すべき音を鳴らした。僕もまた微笑のもとに不在へと返し、もちろん愉快でない謂われはない。元の取れた気さえしはじめている。  早速バッグから酒を取り出して乾杯をし、いつか――三時間もすればどうしようもない程には酔っていた。  ☆ ☆ ☆ 「うん、酔った」  この言葉は僕が飲んだ際に発したい言葉第一位だ。 「うん、酔った」  友人も隣で気軽に頷く。 「酔ったっすねぇ……」  後輩もまた無礼講といった風に寝転びながら呟く。 「しかし、……酔ったよ」 「ああ、酔ったな」 「ええ、これは、酔ったなあ……」  そこで僕はジョッキを掲げる。すると友人も颯爽と含み、僕のジョッキの隣へ置く。やめればいいのに後輩もまた、不遜に起き上がって舐めた後、やはり僕のジョッキの隣へ置く。僕はこうして並べられた、寸分違わず同量のジョッキを眺め、ややあって天を仰いだ。  悪癖が出ていた。酒飲みなら誰もが行うあのゲーム――『誰が一番飲めるのかゲーム』が目下開催されていたのだった。しかし他のご多分に漏れずこれ自体に責任はない、が、発端なら確かに存在する。目の前のカラオケがそうなのだ。今日のカラオケには縛りがある。何が何でも原曲キーで歌わなければいけない縛りがそうさせるのだった。 「ああ、俺か」  イントロが流れ、友人が立ち上がる。 「これ幾つだっけ」 「4」 「4かあ……」
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