美の慟哭

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 そうしてしてやったりといった風の明を誉めて遣わし送り出し、割る、というよりは香り付けの為にオロCを垂らす。と、そこで後輩がジョッキを持ちながら重い口を開いた。 「てか先輩……、大丈夫っすか?」 「ん、何が?」  後輩はいまだに前のジョッキに手こずっていた。誰ぞの浜崎がはじまってうるさく、そっと傾聴する。 「いや、会計っすよ。結構使ってませんか?」 「そっか? でも、酎ハイしか飲んでない」 「いや先輩、これゴッパチっすよ?」 「……ん? なんでそんなにするんだよ?」 「……えっ? いや、なんでと言われても……。オロC使ってるからじゃないっすか? てかあそこにも書いてあるじゃないっすか……」  後輩は壁に張り付けてある紙を力なく差した、が、部屋の暗いのと目の悪い為に僕には殆ど見えなかった。 「ふーん、まあいいよ。てかなんでこんなん飲んでるんだ?」 「……いや、それも先輩が言い出したんじゃないっすか。俺ビールがよかったのに……」 「いやいや、それを言うなら俺だってビール飲みたいよ? 大体なんでこんなクソ酔うものを飲まなきゃならんのよ。下手したら吐くかんねこれ? ちょっとぐらい控えたらどうなんだよ、クソッ! 大体こんな飲んだんじゃここを選んだ意味全くねえじゃねえか。どうなってんだほんと……! いい加減にしろよ? もう」 「……いや、そんな急にキレられても……。だから大丈夫っすかって訊いたんじゃないっすか……。てか話聞いて下さいよ、これにしようって言ったの、先輩なんすって。アルコールはオロCで相殺出来るんですとかなんとか言って……」 「……そう?」  余り記憶にはなかったが、言われてみればそんなことを騒いだ気もする。どれもこれも僕が人の話を聞かない上多分にノリで済ます傾向のある為だ。仕方がない。 「そう、じゃないっすよ……。濃いし……」などと呟いている後輩を後目に、早速僕は尻のポケットから財布を取り出して立てかけられたメニューと照合する。  しかしすぐにわかった。三十秒と掛からない。お手上げだ。僕はすぐさま友人と後輩に「お前等幾ら持ってる?」と話を振り、いやそうな二人からジャラ銭をせしめた、が、それでも幾らか足りなかった。 「いや、これは全然足りてないよ。……どうするんだ、これ? あ、ちょっとお前あいつらから全財産、早くっ!」
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