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取り出して画面を見ると、
ポタリと雨粒が落ちてきた。
「お、牧村さん」
指で水滴を拭い、すぐに耳
に当てた。
「もしもーし」
相手が牧村だと声のトーン
が高くなる。
『フフッ。今晩は』
それが解っているのか、牧
村からの電話は微かな笑い声
から始まることが多い。自分
からの電話に、純平が嬉しそ
うな声を出すのが楽しいのだ
ろう。
「こんばんは。仕事終わった
んですか?」
『うん』
「会えそう?」
『うーん』
前に会ったのは、ちょうど
朱里と瀬良に自宅を貸してあ
げた日だった。あれは先週の
話だ。そろそろ牧村に会いた
い。そう思うのは自然な感情
だが、牧村の反応は微妙だ。
純平の声は僅かに暗くなる。
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