764人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ムリそう?」
ポタリ、ポタリと雨粒が落
ちて、純平の気持ちを現して
いるかのようだ。
『フフッ。傘、持ってないの
かい?』
「え?」
『傘。濡れてしまうよ?』
「え?え?なんで?」
傘をさしていないことが何
故解るのかと、混乱させられ
た。
『フフッ。良かったら、私の
傘に入っていかないかい?』
「えっ?――あ!」
近くにいると確信して周囲
を見渡せば、ライブハウスの
横に置かれた自動販売機の明
かりの中に、牧村が立ってい
た。
「お疲れ様」
直接聞こえた生声に、純平
は駆け寄って抱き付きたい衝
動に駆られたが、実行はしな
かった。これから客入りと言
う時間だ。ライブハウスの周
りには若者達が集まり始めて
いる。
最初のコメントを投稿しよう!