『 雨 』

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   「……ムリそう?」   ポタリ、ポタリと雨粒が落  ちて、純平の気持ちを現して  いるかのようだ。  『フフッ。傘、持ってないの  かい?』  「え?」  『傘。濡れてしまうよ?』  「え?え?なんで?」   傘をさしていないことが何  故解るのかと、混乱させられ  た。  『フフッ。良かったら、私の  傘に入っていかないかい?』  「えっ?――あ!」   近くにいると確信して周囲  を見渡せば、ライブハウスの  横に置かれた自動販売機の明  かりの中に、牧村が立ってい  た。  「お疲れ様」   直接聞こえた生声に、純平  は駆け寄って抱き付きたい衝  動に駆られたが、実行はしな  かった。これから客入りと言  う時間だ。ライブハウスの周  りには若者達が集まり始めて  いる。
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