『 雨 』

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    ――駅に着いて傘を閉じる  と、二人の口数は増えた。  「夕食は何がいい?」  「んー……カルボナーラ?」  「またパスタ?本当に好きだ  ねぇ」  「牧村さんだって茶色好きじ  ゃん」  「茶色?」  「煮物とか焼き魚とか、茶系  多くない?」  「あぁ、なるほど。確かに」   牧村はクスクスと笑う。  「俺も嫌いじゃないけどさ。  それに牧村さんの薄味料理に  舌が慣れてきた気がするんだ  よねー」   牧村が笑うと嬉しくなり、  ついはしゃいで舌を出して見  せる。   電車のホームでスーツ姿の  中年男とパンクファッション  の若者が仲良く談笑している  様子は、人混みに紛れて目立  ちはしていない。
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