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「――うー」
「純平君、大丈夫?」
「大丈夫……だけど、蒸し暑
い~」
予想通りの満員電車の中、
運が悪いことに二人は人混み
の真ん中になってしまった。
長身の牧村はまだいいが、
華奢な純平はギターケースを
抱えながら揉みくちゃになっ
ていた。
「汗凄いね」
牧村の手が純平のこめかみ
に流れる汗を拭うと、その手
がピタリと止まる。
「?」
「……悪いことばかりじゃな
いか」
不思議に思う純平を余所に、
牧村はポツリと呟いた。
下ろされた手は純平の肩に
触れ、何処にあるのかと腕を
辿ると、ケースを抱える指先
に行き着いた。
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