『 雨 』

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   「あ、いや、なんでも……酒  飲みたいの?」  「前に、風呂上がりにビール  飲んで美味しそうにしてたの  を思い出しただけなんだけど  ね」   にこりと微笑んだ牧村は、  純平の肩越しに腕を伸ばして  ビールを取ろうとする。  (ちょ!ちょ、ちょっ!)   客も店員もいる店の隅。牧  村の腕の中に閉じ込められる  時と同じような立ち位置に、  純平のボルテージは一気に上  がる。  「んー。二本ずつぐらい買っ  ておこうか?カゴ持ってくる  ね」  「……ッス」   牧村の気配が背中から離れ  ると、純平は息を吐いた。  「ヤバい。今のはキた……」   手を握ってときめくのとは  また違う、もっと強い感情に  心臓が止まりかけた。
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