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「あ!牧村さん、濡れてるじ
ゃん!」
そんなことを考えて牧村の
身体を見たお陰か、濡れた肩
に気付いて傘が自分にばかり
向けられていることを知る。
牧村の持つ傘を押しやり、
今度は純平の肩に雨水がかか
る。
「俺は濡れてもいいけど、牧
村さんはスーツなんだからダ
メだよっ」
「いや、純平君こそ薄着なん
だから冷やさないようにした
方が――」
「あと少しだもん、ちょっと
ぐらい平気だって!」
純平は譲ろうとしないが、
Tシャツ一枚の純平が風邪を
ひかないかと心配する牧村も
引く気はない。
すっかり足も止まってしま
った二人の、下らなくも幸せ
はやり取りを止めたのは意外
なものだった。
「だーかーらー――ん?」
先に気付いたのは純平だ。
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