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「いいから言うこと聞いてく
れないかな」
「しっ」
「?」
純平の指先が牧村の唇を塞
ぐ。雨音しか聞こえない広い
公園の中で、純平は耳を済ま
せた。
「……ほら!聞こえた?」
「いや、私には何も」
「こっち」
「あ、こら。傘に入りなさい」
純平は牧村の手を取って歩
き出し、かすかに聞こえた音
の方に向かって進む。
「――あれだ!」
何かを見つけた純平は牧村
を置いて駆け出した。
「牧村さんも早くっ」
「はいはい」
もう濡れてしまった純平を
叱る気にもなれずに、やれや
れと苦笑しながら後を追う。
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