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純平はベンチの下を覗き込
むようにしゃがみ込んでいた。
牧村はその後ろに立ち、純平
の上に傘を差しながら腰を折
る。
「こいつの声が聞こえたんだ
よね~」
ベンチの下に置かれたダン
ボール箱。その中から持ち上
げたのは薄汚れた猫だった。
「よく聞こえたね。捨て猫に
しては大きいなぁ」
「ノラかな?」
「んー」
牧村が純平の手にパンチを
している猫に優しく触れる。
頭から耳、そして前足を探
るように撫でる。
「首輪の跡はないみたいだね。
傷もあるし、爪も伸びてる。
抱き上げられるのも慣れてな
いようだし、野良猫かな」
「そっかぁ」
「……連れて行きたいかい?」
純平の声のトーンの変化で
気持ちを察した牧村は、純平
の頭をくしゃりと撫でる。
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