『 雨 』

26/54
前へ
/453ページ
次へ
   「お湯入れてくるからタオル  持って来てくれるかい?」  「はーい」   二手に分かれて行動すると、  それまで静まり返っていた家  が活気づいた。電気を点ける  とソファで丸まっていた猫が  片目を開ける。  「ヨシノさん、寝てたの?」   寝室に行く途中で目が合っ  た純平が声をかけるが、この  家のお姫様はツーンと顔を逸  らして目を綴じてしまった。  「あはは……」   純平とヨシノさん。なかな  かその距離は縮まらない。   純平は寝室のクローゼット  を開けるとバスタオルを二枚  取って居間に戻ることにした。  「あれ?」   ソファを見るとヨシノさん  の姿がない。床を見回しなが  らタオルをソファに置いた。
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!

764人が本棚に入れています
本棚に追加