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まぁ、いいかと一旦ヨシノ
さん探しをやめると、張り付
いてくる感覚に耐えられずに
Tシャツを脱いだ。
「結構濡れたなぁ」
絞りたくなるぐらいTシャ
ツは水気を含んでいる。
「寒くないかい?」
「あ――」
居間にやってきた牧村の腕
の中にはヨシノさんがいた。
前脚を牧村の肩に乗せ、可愛
らしい声で鳴いている。
「純平君?」
「あー……大丈夫」
口ではそう言っても、純平
の視線は床に向けられた。前
髪から水の粒が落ちて、フロ
ーリングの硬い床にポツっと
落ちて弾ける瞬間を見た。
歩く気配が近付いて来て、
裸足の爪先が水滴を踏む。
「ほら、拭かないと」
タオルを一枚取った牧村が
純平の頭を包み込む。ふわり
とした感触の中に牧村の香り
がして、純平は瞼を閉じた。
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