764人が本棚に入れています
本棚に追加
「くすぐったいよ」
「自分でやる?」
「……ううん。やって」
「フッ。はいはい」
大きな手が優しく髪を拭く。
純平にとってはこの手が何よ
り愛しい。例えヨシノさんで
もヤキモチを焼いてしまうほ
どに。
襟足に手が来るとくすぐっ
たいだけではない感覚に背筋
が僅かに震えた。
「ん……」
甘い声が漏れる。純平が羞
恥に頬を染めれば、牧村の胸
が高鳴った。
タオル越しに触れていた手
が止まり、不思議に思った純
平が瞼を開けて牧村の顔を見
上げた――
「……」
「……」
目と目が合わさり、耳に聞
こえるのは自分の鼓動と雨音。
最初のコメントを投稿しよう!