第1章

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亨が帰ってきたことに気づいた万智留は、プイッと横を向いて無言で部屋の方に走っていった。 「ただいま。」 万智留の行動に気をもみながら亨は家の中に入っていく。 「お兄ちゃん、おかえりなさい。 今日はとんだお客様がいらしてね…。」 「さっきの連中か?」 母親は、どうしたらいいか考えあぐねながら口を開いた。 「ドラマかなんかのプロデューサーさんと監督さんなのよ。 テレビの世界では知らない人は居ないくらい有名な方らしいの…。 次のドラマの準ヒロインは万智留をどうしても使いたいって、頭を下げてお願いに来られて… お兄ちゃん、どうしたらいいと思う?」 「断りゃいいじゃないか! 万智留の代わりなんて掃いて捨てるほどいるだろ?」 吐き捨てるように亨はいい放った。
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