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数分の後、リビングの机にはもも子とウンチくんが、ティーカップを傍に携えつつ対面して座っていた。
「飲むといい。人生は時に波乱に満ちている。しかしながらそれは同時に、人生はまた平和な時もあることも意味するのさ」
他人の家の飲み物とティーセットを許可なく使って紳士ぶるウンチくんの姿を、もも子も多少であるが見慣れてきたらしい。
苛立ちは失わないながらも、それは先程までのようなテンパりを伴うものではなくなっていた。
「で、アンタ誰よ?」
薦められるままにティーカップを手に取りながら、怪訝そうな目でもも子は尋ねる。
「そう蔑んだ眼をするな。別に怪しいものではない……と、これはさっきも説明したかな?」
確かに言いはしたが全く説得力が伴っていなかったことに、ウンチくんは気づいていないらしい。
それもその筈、本来無生物である筈の、それも見ず知らずの排泄物の言う事を鵜呑みにする程もも子は純真無垢な少女ではないのだ。
「反応からするに、キミは私のような生きるウンチを見るのは初めてのようだね?」
「当たり前よ! どこの世界に手足が生えてて顔があって人みたく喋って、ついでにメガネまでかけたウンコがいるってのよ?!」
そう言ってもも子は今一度ウンチくんのその奇怪な容貌をした体を見回す。見れば見るほど不可思議な姿である。
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