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ごくごく普通の女子高生・もも子には、一つの大きな悩みがあった――
キーンコーンカーンコーン!
校舎内に、昼休みの開始を告げるチャイムが鳴り響く。
大多数の生徒達が昼食をとろうとざわめきを強めていく教室は、12月に入ったこの日もその活気で寒さを和らげているかのようである。
ばびゅーん!
和らげているどころか、寒さを吹き飛ばして余りある暑苦しい熱の籠ったダッシュが、その教室から一直線に出発した。
その嵐のような駆け足を人目憚らずおっぱじめたのは、とある女子生徒であった。
桃色の髪はボブヘアー、一見普通な外見をしている彼女であるが、ある一点においては一時的に奇怪な風貌に変化、というか変色している。
顔が、真っ青なのである。
「ハァ……ハァ……!」
明らかに何故か苦悶の表情で走る彼女の行先は、女子トイレであった。
ということは彼女は、これまで授業中便意、乃至は尿意を抑え込んでいたということであろうか。
「へへっ、またアイツかよ」
「ああ。“大ピンチもも子”が、例の時間らしいな。プクク……」
女子生徒の名はもも子という。道中廊下ですれ違った男子生徒達が、彼女の後ろ髪を引っ張るようにあざ笑いながら噂をしていく。
どうやらもも子は校内では何故か有名らしい。
その理由は、つい今しがた彼女が見せた猛ダッシュと大きな関係がある事は言うまでもない。
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