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バタン!
そんな外野のヒソヒソ話も何のその。それ以上に優先すべき生理現象問題を抱えたもも子は、トイレの個室の一つに飛び込み、乱暴にドアを閉めた。
彼女が“大ピンチ”と呼ばれているのは、何を隠そうこの生理現象を抑え込むため顔を真っ青にして一心不乱に急ぐさまを揶揄しているからに他ならない。
問題は、その生理現象とはどのようなものかという点である。
もも子が我慢していたのは、実は便意と尿意のいずれでもない。
本来ならあえてトイレに籠ってするような行為でもないようなものなのだが、それが何なのかは、その効果音に聞くのが直截である。
ガチャッ!
個室のカギも閉めた。後は我慢していた悪性の毒素をリリースのみである。
もも子は、今まで我慢に我慢を重ねてきた自身を労った。
己がこれから放つことになる臭気や轟音を公衆の五感に与えてしまう自責の念。
それにより彼女の内面を構成する大切なものが崩壊する羞恥の念。
そして自身をこれまで苦しめていた元凶に対する憎悪の念。
様々な情操がもも子の脳内に混沌として揺蕩う中、それらを混じり合わせながら、今珠玉のハレルヤを得んと彼女はお腹にグッと力を込めた。
「んんっ……!」
ブッッッッッ!!!!!
小さな小さなトイレの中に、大きな大きな爆発音が、耳を力強く劈くように豪快に鳴り響いた。
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