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そう、もも子がこれまで我慢し、今盛大に解き放ったのは、“おなら”であった。
それはとても人間が、それもう一介の女子高生に過ぎないもも子が放ったとは思えない程。
唸るような轟音は、女子トイレ内を席巻するに飽き足らず、全校舎中にその放屁という事実をまるで自ら喧伝するかのように響き渡った。
もも子のおならが公害レベルなのは、その放屁音だけにとどまらない。
ブゥゥゥゥゥンッ!!!
そのガスが放たれる風圧もまた、さながら天災のようである。
局地的に発生したハリケーンがトイレ中に渦を巻き、それこそハルマゲドンを想起させるかのような暴風が狭い室内を輪廻のごとく流転してまわった。
その風圧はトイレ内の物という物を乱暴に蹴散らし、窓ガラスをガタガタと荒々しく揺らす。
運悪くも同時間帯にもも子より先にトイレに籠っていた別の女子生徒は、その剛力なる風圧に抗えぬまま、トイレの出口から3m程の所まで吹き飛ばされた。
ゴロンゴロン……。
勿論いくら威力が強くともおならはおなら。大型台風はほどなくして力を失って消え去る。
但しトイレ内はまさしく台風が過ぎ去ったかのような見るも絶えない惨劇である。
綺麗に並べて置かれていた新品のトイレットペーパーが、力無くトイレの少し湿った床に転がり落ちた。
「ハァ……」
おならの放ち主は脱力した。
それは恐らく解放感だけでなく、罪悪感や羞恥心を孕んだものであることは想像に難くないであろう。
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