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「大体どこから話してんのよ!? 隠れてないで姿を見せなさいよ!」
気の強い性格を露にもも子は怒声を散らす。それでもなお、謎の声の主はクールさを失わずに落ち着いた対応を取った。
「やれやれ。別に隠れてなどいないさ。というより私は、ずっとキミの正面にいるんだがな」
「ッ!?」
居所を教えてもらったはいいが、もも子の眼前には洗練されたフォルムの洋式便器が一つ鎮座しているだけ。人間どころか、九官鳥の一羽すら見当りはしない。
「まさか……?」
何を思ったのであろうか、もも子はそれまで閉まっていた便座のフタに手を掛けた。
普段は節電のために閉めてあるそれは、使用時のみ開けるもの。だが、まさかそんな場所から声が聞こえる筈は……。
パカッ!
最初は恐る恐る、しかし最終的には意を決して勢いよくそのフタを開けた。
すると便器の中には、あり得ない物体がくつろぐような姿勢で佇んでいた。
「初めまして。もも子クンだね?」
「キャアアアアアア!!!!?」
その物体を目の当たりにしたもも子は、尻餅をついて絶叫した。本来ある筈の無い、またあってはならない事象が、眼前に実存していたからである。
阿鼻叫喚の彼女の目に映ったのは、一本の巻きグソ。言い換えるならば、ウンコである。
「私はウンチくんだ。どうぞお見知りおきを」
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