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私は矢幡さんのようになりたかった。 有希ちゃんのようになりたかった。 須永さんのようになりたかった。 清水さんのようになりたかった。 そして、佐々木のようになりたかった。 矢幡さんの協調性に憧れた。有希ちゃんの優しさに憧れた。須永さんの明るさに憧れた。佐々木の強さと、不器用さにすら憧れた。 私がいつもイライラしていたのは全てが羨ましかったから。 みんな揃って私には無いものを持っていたから。 差し伸べられていた手にも気付かず下を見ているだけだったから。 「泣いてないです。夜中なので目が限界なだけです。気にせず歌ってください」 掴みに行こうと思った。今からでもきっと遅くない。だって今日はこんなに楽しい。 きっと私は矢幡さんになれる。有希ちゃんになれる。須永さんにもなれる。佐々木……は、どうでもいいか。 暗がりに沈んでいた期間が長かった分、時間はかかるかもしれない。 でも簡単なことからでいい。 まずは笑おうか。 だってこの世界は笑顔で溢れている。 眩しいくらいの光で溢れている。 手を伸ばせば私だってその光の欠片ぐらいなら掴めるかも知れない。 さぁ、もう日付が変わる。明日が来るんだ。 下を向くな!! 笑え!! 私!! もう大丈夫だ。 なんたって私がついてるんだから。 差し伸べられた手の暖かさを忘れてはいけないよ。             「針」 完
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