二十一歳、残業前

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どたばたと足音を響かせて佐々木がやっと走り寄ってきた。どこにいたんだよ。なんでこんなに汗かいてるんだよ。要領の悪さに私はまたイライラする。 「鈴木さん、すみません!!どうしました?」 汗を袖で拭いながら佐々木が喚く。 「どうしましたじゃないよ、ネジは?」 「あっ、ネジ?ネジ……すぐ持って来ます!!」 再びどたばたと走り出す佐々木を見送る。どうしてネジが切れる前にさっと持って来れないのだろう。毎日のことなんだからタイミングなんて分かりきっていなければいけないのに。周りの視線が痛い。 再び玉のような汗を浮かべながら佐々木がどたばたと戻って来た。 「佐々木!!こっちにもネジ!!テープも!!」 「佐々木!!私のとこももうクッション材がなくなる!!早く!!」 あちこちのラインから声が飛ぶ。佐々木は「はい」と叫びながらまた走り出す。 しかし佐々木はきっとネジだけ抱えて戻って来る。要領が悪いだけでは済まされない、あの記憶力の無さ。全力で走ってるように見えるのにあのトロさ。 私はイライラする。いや、私だけじゃない。きっとみんなもイライラしている。こうしている間も掲示板の数字は点滅を繰り返している。残業は確定だ。ため息を吐きながらコンベアにもたれる。
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