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忘年会は繁華街のど真ん中、広いお座敷のある居酒屋で開催された。
なるべく目立たない位置に座りたくて早めに店に入ってみたものの、清水さんとパートのおばちゃん達に引きずられ、一番賑やかな席に移動させられた。
そして私はこの上ないぐらい焦っていた。
端から順番にマイクが回ってくるので一人一曲ずつカラオケを歌わされるという。
今まで忘年会に参加したことが無かった私はこんな面倒くさい風習があるなんて知らなかったのだ。
知っていたら清水さんを敵に回してでも絶対に参加なんてしなかった。
汗ばむ指で回ってきた歌本を捲る。どうすればいいのかわからない。「歌は苦手なんです」とでも言ってスルーすればいいのはわかっている。ただその時の周りの空気を考えると私は動けなくなる。
今振り返ると私は昔からそうだった。人に好かれたいとはこれっぽっちも思ってはいない。ただ、人にどう思われているのかはいつでも気にしていた。おかしな矛盾だと思う。嫌われる事なんて怖くないはずだったのに。
清水さんに再会してからは更にだ。もう自分の中でこじれすぎていてどう動いたらいいのか判断ができなくなっている。
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