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「ちょっと待ってください、鈴木さん!?どこまで行くんですか!?」 私は佐々木の袖を引っ張りながら夜の繁華街を全力で走っていた。 「鈴木さん!?何があったんですか!?」 状況を飲み込めていない佐々木はさっきから同じ台詞をバカみたいに繰り返し叫んでいる。 何があったのかなんて正直自分でもわからない。 ただもう私はなにもかもがイヤになったのだ。 その結果の逃亡だ。佐々木を巻き込んで。 「鈴木さん、どこまで行」 「ここ!!」 目当ての店を見つけた私は問答無用で佐々木を抱え込んだまま駆け足で入店し、叫ぶ。 「フリータイムで大人二名!!」 「かっ、カラオケ屋……?」 「ヤジの飛んで来ない空間で、思う存分佐々木さんに歌っていただきたいと思いました。今日はここからが忘年会です。ともに喉が嗄れて体力が尽きるまで歌いましょう。行きますよ、十号室ですって」 「え、えええー……?」 佐々木は狐につままれたような顔をしてはいたが、お得意の苦笑いは浮かべてはいない。 私はその顔を見て満足して雑音の無い空間を目指す。
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