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佐々木は歌う。 へたくそな歌を。 真剣な表情で。 私も負けずに歌う。 へたくそな歌を。 笑顔で。 嗄れた喉に満足して、お世辞にもキレイとは言えないソファの背もたれに身を預ける。もう何杯めかになるかもわからない烏龍茶をすすりながら佐々木を見上げる。 瞬間 私の胸の中で、不機嫌な顔をしている少女がこちらを見上げている事に気づいた。 それはとても見覚えのある……、あの日の私。 必死でもがいていた、愛すべき幼ない私。 助けてあげなきゃと思った。
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