十四歳、とある朝

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「おはよー!!……って、なにこれー!?」 教室に続々集まってくるクラスメイト達。このままじゃいけないのは分かっている。じきに先生だって来るだろうし、下手な絵を晒されている事だって消えたいと願うぐらいに恥ずかしい。だけどどうしても教室に踏み込めないんだ。あの黒板までどんな顔をして歩いていけばいいのか私には分からない。 「なにこれー?絵?あ、もしかして鈴木さんの!?」 一人の女子が振り返って私に問い掛けた。悪気なく私を見つめる彼女と一瞬目が合ったけれども、小さく頷いた私はもう顔が上げられなくなってしまった。金曜日の上履きはくたびれた汚れかたをしている。 「もーう!!なんで男子達ってこういうことすんの!?まったく……」 さっきの女子、……確か、名字は矢幡さんだったかな。矢幡さんが文句を言いながら手際よく黒板からノートの破片を回収している。 「まったくもう!!鈴木さん!!こんなんされて黙ってちゃだめじゃん!!ほら!!ちゃんと持って!!」 矢幡さんが私にノートの破片を押し付けるように手渡してくれた。 「ありがとう……。」 心から申し訳ない気持ちになって、下を向いたまま矢幡さんにお礼を言った。すでに矢幡さんは友達の輪の中に戻っていて、私の声なんか聞こえてなさそうだったけれど。 私はズルイ。こうやって何かある度に誰かに助けられている。自分で解決する努力もせずに逃げて現実逃避して。私は卑怯だ。“強い”誰かに助けられてホッとして。今日も“弱い”自分に甘えている。 私はみんなみたいに強くなんてなれない。器用になんてなれない。この教室で上手く立ち振る舞う術なんて知らない。 まだ十数年しか生きていない私は、もがき方がわからず、ひたすら爪先ばかりを眺めていた。
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