十七歳、昼下がり

2/3
前へ
/25ページ
次へ
もうすぐ五時間目が始まる。 有希ちゃんに手を振り、自分の教室に戻り、静かに席についてベルが鳴るのを待つ。 このまま静かに一日が終わりますように、と願ったりした日に限ってイヤな事は起こる。 「あっ、鈴木さぁん!!」 甲高いキンキン声を響かせて、キンキン頭の一際目立つクラスメイトが正面に立っていた。 「……なに?」 掠れた声を振り絞ってなんとか返事をしたけれど、不安でしょうがない。どう考えても私と接点なんか無いこの子(確か須永さんだ)に声をかけられるなんて不安要素しかない。イヤな予感しかしない。 「鈴木さん、男紹介してあげるー!!見て見て、どの人がいい~?」 須永さんは金髪をポンポン弾ませながら、無邪気な笑顔で私の机の上にスナップ写真を次々と並べている。 「え、ちょ……いい……」 「えー?鈴木さん彼氏いないでしょー?紹介してあげるってー、ほら見てよ!!イケメンばっかりでしょー?」 「や、……いいって……」 髪を染め、刺繍入りの特攻服を着てバイクに跨る男の子達の写真。こんなものが私の机の上にみっちりと並んでいる現実が受け入れられなくて、必死で写真をまとめて須永さんに押し返す。 ベルが鳴ったら先生が来てしまうのだ。説明しろと言われたらどうするのか。こんな面倒な姿、絶対に晒したくない。 「なんでー?男いらないのー?みんないいヤツだからさあ~」 「いいよ……、あの、いいいらないっ!!」 珍しく大声を出したもんだからクラスのみんながこっちを見てる。うつむいていてもたくさんの視線が私に突き刺さっているのがわかる。 こんな写真を手にしている姿をクラス全員に見られることになるなんて。 「ふぅ~ん……」 無邪気な笑顔だった須永さんは、今度は純粋に心の底から「珍しいものを見た」って顔をして自分の席に戻って行った。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加