十九歳、夕暮れ時

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ため息を一つついて再び足を動かす。ずっとここでこうして眺めていたかったけれど、帰らないわけにもいかないから。 もうあと何分もしないうちに辺りは暗くなる。冬の夕暮れはあっという間だ。 歩道橋を降り再び歩道を歩き出した私は車のクラクションの音で飛び上がった。 どこかで見たことがあるようなド派手なギャルが車から降りてこちらに走り寄ってくる。 「鈴木さぁん!!鈴木さんだよねー!?久しぶりじゃーん!!私のこと覚えてるー!?」 「あ……、ああ、須永さん……。」 最悪だ。 「そうそう、須永だよー!!元気だったー!?鈴木さんなんで歩いてるのー?」 久しぶりに会った元クラスメイトは以前と同じテンションの高さで私に話しかけてきた。最悪だ。 「あ、別に、あの、バイトの帰りで……。」 もうどうしても私はこの人が苦手だ。どう会話したらいいのかわからない。それどころか会話自体をしたくなかった。 「えー!?鈴木さんちってこの辺なのー!?てゆうか車はー?」 「……あ、車は、免許ないから、私は……。」 「マジでー!?車なきゃどこも行けないじゃん!!いいよ!!乗りなよ!!送ってあげるからー。」 最悪だ。 「いい、いや!!いいの。大丈夫。もうすぐ着くし大丈夫だから。」 どうしよう。絶対に須永さんに家なんか知られたくない。この人、私との距離感とか温度差とか全然考えないで勝手に上がり込んで来そうだし、そしたらそしたで度々遊びに押し掛けて来そうだし、第一私の部屋は画材道具や漫画が散らばっていて、ギャルが抵抗なくくつろげるような部屋ではない。
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