第1章

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         目を閉じて、想像する。真田さんの家の軒下に鳴く     三羽のひな。     ひながツバメとなり巣立つ日。     真田さんはその日を心待ちにしている。     この世の、私が一生行くことのない場所で。     私はその場所にそっと立っている。          気づけば真田さんが隣に立っている。     真田さんの顔は見えない。     隣り合い、私達はそっと巣を見上げている。     二人して、同じ方を見ている。     「いつでしょうね」私は言う。     「もうじき」と、真田さんは答える。
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