20XX/1/2

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20XX/1/2

「明けましておめでとうございまーす」 その日、私はまだ歩くこともできない赤ん坊を抱いて、実家に新年の挨拶に来ていた。 せかせかとおせちの重箱を並べる母の慌て顔。昼間っからビール瓶を抱えてにやけている父の顔。就職して家を出ていた弟の顔なんて本当に久しぶりに見た。 「うわ、なんだお前ー!ヒゲなんて生やしてぇ!似合わなー!」 「うっさいよ!これ結構評判いいんだかんな!?」 「嘘つけー!その汚い顔でこっちくんなっ!凛が泣くわっ」 「イケメンすぎて凛ちゃんだって俺に惚れるはずだ!」 「ありえんわ!」 姉弟の言い合いを前にしても凛は、私の腕の中で小さな寝息を立てて眠っていた。 よし、そのまま眠ってな。ヒゲ怪獣見て泣かれたら困るし。
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