第1章

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『リサママの所に行くんでしょ…?』 あのとき、マリアが聞いた。 あのマリアが急に蘇ってきて、 その言葉を発する。 あのとき、街に妙な奴らが音もなく忍び込んで来てて、 いわゆる、 組合長である俺は、 一番遅くまで店を開けてる【リサ】にみんなを集めていた。 街の店主達で作る組合の会合。 街の治安を守るのが、組合の一番の目的。 裏の組織ともそれなりの協定は結んではいるが、 あちらも浮き沈みの激しい世界らしく、 結局は自分たちの身は自分たちで守らなければならない。 その会合を誤解してたらしい。 リサの店に俺が入り浸ってるという噂が街に流れていたことなど、 ぜんぜん知らなかったんだ。 知ってたとしても気にもしなかっただろうけど。 いろんな噂でできあがってる街だ。 いちいち否定して回る気もない。 それから半年だったな… あの、マリアが消えたのは。 結婚したと聞いた。 店の客と、 居なくなってすぐに。 俺は、マリアにとって何だったのか… そんなことを期待しちゃいけない。 そういう生き方をしてるんだから… あのマリアと重ねてしまった… 消えたときの苦しい気持ちが蘇ってきて… ベッドに横たわってる素肌のままの彼女に、 マリアを…
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