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少しでも長く彼と一緒にいたい俺は、傍にいてもらえるように我が儘を言い続けてしまうのは仕方がないだろう。
誰に何と言われようが、俺は彼が好きでたまらない。彼が誰かのものになるなんて許せない。すでに結婚適齢期で周囲からいい人はいないのか、紹介しようかなどと言われているようだが、そうさせないように俺は仕事と称して彼を振り回している。
誰が高条を渡すものか! 今日こそはなんとしてでもこの状況を打破し、彼ともっともっと一緒にいられるようにしてみせるぞ。
何度も連れてきている高条は、遠慮なくウチの鍵を使い室内へと運んでくれた。優しくソファまで誘導され、水を取りにキッチンへと向かった。
「斎木さん水を飲めば少しは酔いも醒めるかと……ッ」
水の入ったコップを手にした高条が戻ってきて、俺の姿に足を止めた。
「……んっ、たかじょうーっ暑い?」
ネクタイを緩め、シャツのボタンを真ん中まで外して、首筋を見せつけるように露わにした。それに高条が釘付けになっているのを確認し、俺はゆっくりと残りのボタンを外していく。
火照ったような顔で上目使いに高条を見つめれば、彼のコップを持つ手に力が入ったのがわかった。
「早く、水……ちょうだい」
ジッと高条の目を見てそれを欲する。
「……ええ」
ゆっくりと近づいてきて隣に座るのを待つが、彼は座るどころかコップをソファ脇にある小さなテーブルに置き「どうぞ」と言った。
「高条っ」
「俺がいてはゆっくり寛げないでしょう。ここでお暇します」
さっさと自分のカバンに手をかけ帰ろうとしている高条を、急いで止めるように手をかけた。
「まだ帰るな」
「そこまで動けるなら酔いも醒めたでしょう。今日はお疲れでしょうから、早く寝た方がいいです」
かけた手をそっと退かされ、優しく微笑み「お疲れ様でした」と言われてしまえば、もう止めることはできないのだろうか。いや、俺は高条の本心が聞きたいのだ。だからこのまま帰すなんてことはしたくない。
「ダメだ、まだ帰るな! 今日はこのままウチに泊まれ」
「斎木さん……申し訳ないですがそれは……」
「じゃあっ……ちゃんと答えろ、お前の気持ちを!」
「…………何を」
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