第1章

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 寝室では極力明かりを抑える。これは彼への配慮だ。普通の男なら同性を抱くなんてこと身の毛がよだつ思いだろうから。少しでも視界を悪くし、声も抑え、男を抱いたトラウマをつくらないようにしてあげたい。  ベッド脇にあるサイドテーブルの引き出しから、繋がるために必要なローションを取り出した。いつでも彼とできるようにと用意しておいたものだ。 「…………準備がいいんですね。いつも使っているんですか?」 「あった方が都合いいだろう」  ローションを出した時、少し高条の機嫌が悪くなったような気がした。    それはそうだろうな、お前と寝る為に準備よくそんなものを用意されていたとなれば気持ち悪いだろう。 「そんなところに突っ立っていないで、早くこっちに来い」  ベッドに腰掛け、高条を手招きする。観念したかのように隣に腰を下ろし、少し考えた様子を見せてから高条が聞いてきた。 「本当にいいんですか……今ならまだ……」 「俺は冗談で済ますつもりはない。お前はただ俺の命令を聞けばいいんだ」  自分でも呆れるくらいひどい命令だ。会社に苦情を出せば俺は一発でクビだろう。    だが、それでいい。もし間違って、会社の方から俺の方が必要で高条をクビにするなどと言われても、俺の方から辞めてやるつもりだ。彼に一切の責任はないのだから。  プライベートを引きずって仕事に影響を及ぼすなんて、女々しいと思われるだろう。でも、もともと彼に会いたくて、彼と一緒にいたくて入った会社だ。その彼に嫌われてまで同じ場所にいたくないし、いられる自信もない。  意を決し、隣に座った高条に向き直りゆっくりと抱きついた。心の中で「ごめん」と何度も謝りながら……それでも今日だけは許してくれ。  高条も諦めたのだろう、俺を受けとめ身体を強く抱きしめ返してきた。    彼のぬくもりが温かい――一つ一つ彼を忘れないように、今は彼を感じよう。 「――キスしてくれ」  そう強請ると今度はすぐに答えてくれた。最初は啄ばむだけの触れる軽いキス。それでも彼の口唇のやわらかさに身体が疼く。  実は彼の知らないところで、そっとこの口唇に何度か触れたことがあった。
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