不思議の中へ。

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 同じ頃嵐山と三本刀は、敢えて神戸駅の改札口には入らず駅前の喫茶店で時間を潰している。 平八郎にはすぐに分かった。 嵐山が何かを心配していることを。 伊達に同じ第一分隊にいる訳ではないのだ。 「暗いぞ小林。 さしもの御主も疲れたか?」 「あの惚気グマのせいですわ。 人前でいちゃつきよってからに…」 苦笑しながら嵐山。 やがて廣之進と真之は、嵐山が二人にヤキモチを妬いていると内心にて早合点するに至る。 実はそれこそが平八郎の狙いであるとは露知らずに。 (やはり… 案ずるな小林、宮之原の姫君は、いつまでも御主を誤解する程眼を曇らせてはおらぬ) 内心でそう呟きつつ、やがて平八郎が口を開く。 「義弘殿と小十郎は暫しここで待たれよ。 ちと顔を貸せ小林。 拙者直々に気合いを入れてやる」
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