不思議の中へ。

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 ふと気が付いた時、ユリネは客車の中ではなく1時間くらい前に出発した筈の省線神戸駅のホームに佇んでいる。 否、よくよく辺りを見れば、どう見ても省線神戸駅のホームではなかった。 櫛の歯のように整然と並んだホームに発着する、窓のない電車に牽引された客車列車。 しかも窓のない電車の塗装は実にカラフルで、青と肌色とのツートンカラーやそれに銀色の細い帯を巻いたもの、更には濃淡をつけた鶯色のものや赤一色のものまでいた。 それらが率いている客車もまた、青あり葡萄色あり鶯色ありと実に様々であった。 初めて目にする不思議な車輌はまだいる。 42形電車に比べ明らかに丸っこい『速快新』なる実に変わった名前がついているらしい電車は、白い車体に淡い青色の帯を巻いていた。 そして何より、それらの不思議な列車が発着するホームの駅名標示板には、どれも判で押したかのように神戸ではなく ゴッドア …と書かれているのだ。
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