第三話 月に願いを

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「引越し屋は、十時にならないと来ないので、まずは座りましょう。 コーヒー買って来ましたから」 といつもの様にゆいが仕切る。 『荷物で狭いですけど、古田さんも京田さんも座って下さい』 四人は荷物をよけて、床に腰を下ろす。 古田は、部屋の中を見て、あの時の事を思い出していた。 自分が自分じゃなくなった、あの日の事を… あんな事があったのに、今もこうしてアキと話が出来る事が、古田にとっては嬉しい。 古田の中では、まだアキを思う自分がいる。 だが、あの頃とは違う感情。 アキのために、力になりたいと思う自分。 どんな事があっても、古田の中ではアキを嫌いになる事なんて出来なかった…。 この想いを二度と言葉で伝える事はないが、それでもいいと古田は思った。
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