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[ア]『あんなフカフカなベッドじゃなくて良い。人間が寝そべる事が出来る、脚の長い机みたいな感じで良い。頼めるか?』 [義]『任せておけ。秀忠殿も、あの辺りは何かあった時、すぐに応急措置が出来る場所にすると言っていたからな。』 [ア]『それじゃあ頼む。はぁ…次は大工の所に行かねぇと……。』 [義]『随分と忙しそうだな。』 [ア]『いや、そうでもないさ。』 [義]『そういえば、アキラにコレを渡すのを忘れていた。』 そう言って、鬼島津は懐から何かを取り出し、俺に向かい手を広げた。 鬼島津の手に乗っていたのは厳つい鍵。 [ア]『どこの鍵だ?』 [義]『危険物を納めた地下牢の鍵だ。一つの牢では入り切らなかったのでな。三部屋に分けた。』 [ア]『そりゃどうも。助かったよ。』 鬼島津の手から鍵を受け取り、俺は診療所兼寺子屋予定地へと向かった。 そこで大工と相談し、馬鹿女の許へと……向かおうとして足を止める。 ………缶詰も地下牢に入れちまおうかなぁ? ちょいちょい林太郎が缶詰パチッてる臭いしなぁ。 俺は、馬鹿女の許に向かう前に、再び鬼島津の所へ向かった。 そして、缶詰の件を鬼島津に伝える。 快諾してくれる鬼島津の隣で、林太郎が絶望的な顔をしていたが………。 俺は敢えて林太郎から視線を外し、気付かぬフリをして今度こそ馬鹿女の許へと向かった。 馬鹿女の部屋からは、何やら賑やかな声が聞こえる。 …………誰が居るんだ? 襖を開くと、新・服部・コン・源が楽しそうに笑っている。 [ア]『………随分と…賑やかだな。』 そう声を掛けると、新が笑顔で俺へと振り返る。 [新]『あっ…父さん。お帰りなさい。』 [ア]『ああ。』 [新]『今ね、源ちゃんがコンちゃんに滅茶苦茶遊ばれてた所だよっ!』 えっ?それが楽しいのか? ウチの子大丈夫? 顔を引きつらせた俺に、コンが盛大に吹き出す。 [金]『先生、凄い顔だね。大丈夫?』 お前の頭が大丈夫か? [ア]『お前等…あまり源を困らせるなよ?』 [金]『ふふっ…嫌だなぁ。俺は先生以外の人間を困らせる趣味はないよ。新さんも言ってたでしょ?俺は源太君を困らせていたんじゃなくて、源太君で遊んでいたんだよ?』 [ア]『俺にはその違いがいまいち理解出来ねぇが……取り敢えず、お前には俺を困らせる趣味があるという事だけは理解した。』 [金]『流石先生。自分にとって不快であろう事もシレッと流しちゃうから大好き。』 [ア]『それは何よりだ。それより…コン。林太郎が怪我をした。』 [金]『えっ!?怪我っ!?林太郎がっ!?』 焦りの色を浮かべたコンの顔に、「ああ、コイツも人並みに情があったのか」なんてどうでも良い事を再確認してしまった。 [ア]『階段から落ちて肩が外れたらしい。一応、手当てはしてあるが、三日間は安静にと言っておいた。』 [金]『林太郎は大丈夫なの?』 [ア]『大丈夫だ。それと、徳川家康が一向に痩せない理由が分かった。』
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