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やたらと疲労が溜まる食事を終えて、俺は自室に戻る。 取り敢えず、大工に渡す図面を引かなければならない。 ………つぅか…ただでさえ素人なのに、筆と墨で図面引くって、難易度ナイトメア……あっ、そうだ。 俺はバックから筆記用具を取り出す。 鉛筆と、定規を使えば良いじゃないか。 折角の便利用品も、うっかりとすれば、すぐに念頭から外れてしまう。 それだけ、この時代に馴染んでいるという事だろうか? 医療器具や薬に関しては不便に嘆いているというのに…人間の脳ミソってのはどうなってんだ? 俺は取り出した筆記用具を使って図面を引き始めた……が、半紙に鉛筆って書きづらいな。 力加減を間違えると、一気にビリ~っといってしまいそうだ。 集中して図面を引いていると、静かに襖が開いた。 そこに居たのは服部とコン。 どうやら、いつものお勉強の時間らしい。 渡してやった知育玩具を使い、文字を書いているコンと、細かく指摘する服部。 ………平和だなぁ。 アレに島津が加わろうものなら、俺は気になって作業する事は出来ないだろう。 危なげのない光景に安堵しつつ、俺は図面を引く作業に戻る。 夜も遅くなった頃、俺達は各々眠りに就いた。 ─ 翌 朝 コンの食事を促す声に目覚めた俺は、旨い朝食を食い、馬鹿女と徳川家康の診察に向かう。 馬鹿女はいつも通りに窓枠へと寄りかかり、徳川家康はいつも通りにメタボだった。 ………どっかのアンパンのヒーローの顔みてぇに、徳川家康の贅肉も気軽に千切れねぇかなぁ? [ア]『徳川家康。アンタ、本当にリハビリしてるのか?』 [家]『無論。部屋の中を何周もしたり、廊下を行ったり来たりしております。アキラに指示された通りにストレッチとやらもやっているが、儂の腹はヘコむどころか成長するばかり。』 [ア]『………アンタ…オヤツは?食事はコンが管理してる。なら、無駄にオヤツ食ってる疑惑が濃厚なんだが?』 [家]『おっ…オヤツですかなっ!?オヤツはアレよ。そのっ…夕食に響かぬ程度にアレして……』 [ア]『アレってなんだ?』 [家]『そのっ…加減っ!!そうっ!!加減しておりますっ!!量を控え目にしてっ……』 ………カロリーモンスターを加減して食ってるんじゃなかろうか? [ア]『………昨日のオヤツは?』 [家]『林太郎に頂いた、丸くて甘いモノを少々。』 ………グラブジャムンですね。 ピンポン玉サイズのクセに、一個300kcalのカロリーモンスターですね。 [ア]『ソレを何個食ったんだ?』 [家]『四つ程。』 300kcal × 4ですか。 1200kcalのオヤツですか。 [ア]『テメェ…ソレ、2度と食うなよ。その四個で、一食分以上食ったも同然だ。しかも、糖分に特化してるだけで、他の栄養素は皆無だ。膵臓に負担掛けて病気にでもなるか?糖質摂り過ぎると糖尿病を引き起こしかねないぞ?』 [家]『…………糖尿病になると、どうなりますかな?』 [ア]『今より厳しい食事制限。怪我しても治りにくくなる。手足が壊死して、最悪切断。』 糖尿病の原因は他にも色々あるし、糖尿病を発病した場合の症状も色々あるが…メタボに危機感を持てないお爺ちゃんには、この位で充分だろう。 すっかり青ざめた徳川家康は、「朝・夕の食事だけにします」と必死な御様子だ。 [ア]『絶対にオヤツを食うなとは言わないが、せめて雑穀の握り飯を少し食べるとか、少しは食べるモノに気を使え。俺は源に付き合って暫く城を空ける。その間、アンタはしっかりと自制心を持ってリハビリに励んでくれ。』 [家]『承知致した。この家康…断固たる強い意思を以て、必ずやこの腹をヘコませて見せましょう。』 その「断固たる強い意思」とやらを、もう少し早く以て貰いたかったなぁ。
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