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[林]『そうは言うが……腕が腐った時よりは痛くない。あれに比べればマシだから………[ア]『馬鹿かっ!?アレと比べて・コレと比べてじゃねぇんだよっ!!脱臼している時点で、体が通常とは違う状態なんだぞっ!?一刻も早く対処すべきだろっ!!』 言いながら、俺は林太郎の脱臼を………どうしようか? 元居た時代なら、安全・確実の為に迷わず麻酔を使っていただろう。 だがなぁ………。 切開手術とかでもない限り、麻酔は使いたくねぇんだよなぁ。 まぁ、徳川家康に薬とかサプリとか使ってる時点で今更な気もするが……。 この時代の人間には、なるべくクリーンな身体でいて貰いたいんだよなぁ。 暫く思案していると、俺の耳に不安そうな林太郎の声が響く。 [林]『………せっ…先生?怒ったのか?俺がすぐに先生の所に行かなかったから……』 [ア]『ぇあっ!?ああ、違う。怒っている訳じゃない。どう治そうかと考えていただけだ。』 [義]『………「考える」…とな?かようなモノ、腕を引っ張れば事足りる。何を考える必要があるのだ?』 [ア]『俺には俺の事情があるんだよ。』 とはいえ、いつまでも林太郎を放置しておく訳にもいかない。 [ア]『……………鬼島津。手拭い持ってるか?』 [義]『持っているぞ。』 言いながら、鬼島津は俺に手拭いを寄越す。 [ア]『暫く借りるぞ。』 [義]『返さずとも構わぬ。好きに使え。』 [ア]『ありがとよ。』 俺は鬼島津の手拭いで三角帯を作る。 そして、自分の手拭いを林太郎の口に突っ込んだ。 [ア]『林太郎。取り敢えず座れ。痛いから覚悟しとけよ?』 俺がそう言うと、林太郎は涙目でコクコクと頷きながらおずおずと座る。 ………若干、脅しが過ぎたか? まぁ、良いか。 俺は、林太郎の外れた肩を麻酔無しでゴキッと元の位置に戻す。 声にならない叫びをあげ、痛みに悶絶する林太郎。 [ア]『さぁて…林太郎。お前は医者か?』 俺の問いに、林太郎はフルフルと首を振る。 [ア]『なぁ?林太郎。俺は医者だよな?』 腕を三角帯で固定しながら問うと、林太郎は訝しげにコクリと頷いた。 [ア]『そうだよなぁ?じゃあ、治ったかどうかを判断するのは誰だ?』 [林]『……………せんせい…です。』 口に突っ込まれた手拭いを出しながら、林太郎は小さな声で答える。 [ア]『じゃあ、俺の指示にはしっかりと従えるよな?』 [林]『しっ…従いっ…ますっ……!!』 [ア]『三日間は安静にしろ。仕事するな。痛みがなくても、俺が「安静に」と言ったら安静に…だ。約束出来るよなぁ?』 [林]『でっ…できますっ!!!!』 [ア]『本当か?腕が腐った時に比べりゃマシだからと、俺の指示を破ったりしねぇだろうなぁ?』 [林]『しないっ…ぜったいっ……!!!!』 [ア]『脱臼は、クセになると面倒臭いんだよ。ポコポコ外れる様になったら、腕が途中からない林太郎は自力じゃどうにも出来なくなる。理解出来たか?』 [林]『りかいっ…できたっ!!したがうっ!!』 [ア]『そうか。それは何よりだ。自己判断で勝手に仕事したりしたら、金輪際俺はお前を診ない。どんな大怪我を負っても、自己判断何とかして下さい。』 [林]『事故判断しないっ!!先生に従うっ!!そのっ…すぐに先生の所に行かなくてごめんなさいっ!!』 林太郎の必死の謝罪を受けつつ、何で林太郎はこんなにもビビってるのかを謎に思う。 余程、恐い顔でもしていたんだろうか? [ア]『ああ、そうだ。林太郎。』 [林]『はっ…はいっ!!』 ………いつまでもビビってないでくれ。 [ア]『徳川家康に、不要な間食をさせるなよ。特にグラブジャムンとかマジやめろ。折角、コンが徳川家康に合った食事を考えてくれてるのに、グラブジャムンなんか食ってたら痩せられない。』 [林]『分かった。家康じいちゃんに間食はさせない……です。』 いや、もう、マジでビビるのやめてくれ。 [ア]『それと、鬼島津に頼みがある。』 [義]『頼みとな?』 [ア]『ああ。城の一階…あの辺りに書庫を作って貰いたい。書庫と言っても、本棚を作って設置してくれりゃあ良いだけなんだが……。』 [義]『その程度。我等に掛かれば一日よ。』 いやぁ、…馬車馬の如く部下を使うの、止めて貰えねぇかなぁ? [義]『他に作るモノはあるか?』 [ア]『ああ、一階のあの辺りに簡易ベッドを五床程頼みたい。出来れば頑丈な。』 [義]『……………べっど?』 首を傾げる鬼島津に、俺も首を傾げる。 [ア]『………アンタの艦の寝床…ベッドだよな?』 [義]『ああ、ベッドとはアレの事か。普段、アレは「フカフカ布団」と呼んでいるのでな。ベッドと言われてもピンとこなんだ。』 「フカフカ布団」て……どんなネーミングセンスだ? 通販番組でも、そんなクソだせぇ名前付けねぇよ。
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