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ちょうど今の季節になりますと、向こうへそびえているなだらかな山々は深い雪におおわれて、ひとつの白い大きな生き物のようにも見えてくるのです。
その白銀をまとった生き物の背を見ておりますと、まだまだ寒い季節がつづくのだな、と思い知らされるような気がしてまいります。
そして、あの山からはときおり動物達がこちらの里まで顔を見せに下りてくることがあります。
この間はきつねの親子がわたしのすぐそばまでやって来ました。
子ぎつねの方は楽しそうにちょこちょこと辺りを動きまわり、親ぎつねの方はその端にちょこんと座って、何か言いたそうな目をしてわたしの方をじっと見つめておりました。
その姿はまるで「おい、春はまだか。あの暖かい季節はまだなのか。待ち遠しいぞ」、とでも言っているかのように思えて非常にほほえましく感じました。
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