第1章

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 ここからは、わたしが「いい人」に取り憑かれるようになったきっかけから順に、これまでのわたしの人生について触れていこうかと思います。  あれは、わたしがまだ幼かった頃のことでございます。 ちょうど、小学校に入るかどうか、といった時分の話でしょうか。 ある日、わたしが家の台所に目をやると、いくつかの洗い物がたまっておりました。 わたしの両親は共働きで、父も母も忙しい日々をおくっておりました。 ですから、洗い物がたまっている台所の風景は、非常にありふれたものでございました。  わたしは、何の気なしに、その皿を洗っておいたのです。 それは、ほんとうに気まぐれでした。 いそがしい父や母を労おうなどという気持ちもなく、ただ純粋に、何となく洗っておこう、と思っただけなのです。
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