第1章

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 そしてさらに日は過ぎて、わたしも高等学校を卒業する日を間近にひかえる時期をむかえました。 その頃でしょうか。 わたしの心にある種の変化がおとずれたのです。  ある日、わたしは友人の雑用を手伝いました。 たしか、居残り掃除か何かだったように記憶しております。 掃除が終わると、友人は礼も言わず、そそくさと帰っていきました。 わたしは、そのことが非常に不愉快でした。   たしかに、今までもこのようなことはありました。 わたしが何か手を貸しても、礼のひとつも言わない人間はおりました。 以前はそれくらいのことで腹をたてたりはしませんでした。  しかしその日のわたしは、どうにもそれが許せず、心の底でさんざんに悪態をつきました。 あとから分かったことなのですが、彼はどうやら、その日は用事があったらしく、礼を言うのも忘れるほどに急いでいただけのようでした。 それでも、わたしは許すことができませんでした。
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