第1章

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 いま思い返すと原因は明白でした。 人からの評価を気にするあまり無理をして、他者に尽くしていたのだから、ストレスがないはずはありませんでした。  同僚の残業を深夜まで手伝ったり、金に困った友人にいくらか貸してやったり、そのせいでわたしの生活がすこし苦しくなったり。 そんな毎日をおくっていればたおれてしまうのも道理でした。 そこへもってきて、感謝の言葉がもらえないぐらいの些細なことで怒り狂っていたのですから、ストレスなどいくらでも溜まっているはずでした。    しかし当時はそのことにまったく気がつきませんでした。  この頃のわたしは、自分のことを「いい人」ではなく、「完璧な人」と勘違いしておりました。 まわりから慕われ、病気にもならず、ストレスすらわたしには存在しないのだ、と馬鹿げた考えを持っておりました。
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