第1章

3/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 「旅の方かな。こんな辺鄙な場所へたずねてくるとは珍しい。泊まるあてがないのなら、うちへ来なさい」と。 わたしはその言葉に甘えました。 そして、藁葺き屋根の、お世辞にも立派とは言えない小さな家屋へ、お邪魔させていきました。 たしかに立派な家ではありませんでした。 しかしその家は、都会の街にはない、不思議なあたたかみを備えていました。  ご老人は、わたしの素性について何も触れませんでした。 たんたんと食事の準備をし、たくさんの料理を振る舞ってくださり、ふかふかの布団をわたしにあてがってくれたのです。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!