起動

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 咆哮の衝撃波に飛ばされた俺は無様に地面を転がり続け、建物の壁に背中からぶつかることでやっと止まった。 「痛っ……たくはないけど、くらくらする」  痛覚は全くないが、背中を壁に打ち付けた衝撃と地面を転がった感覚はそのまま伝わってくる。  ゲームだけど、つい『痛い』と言ってしまうのはゲーマーの性だろうか。  背中を打ちつけた俺は、衝撃に体をふらつかせながらも、同じように飛ばされているであろうユキナを探す。 「いっ!?」  そして驚かされた。  俺と同じく吹き飛ばされていると思っていたユキナは既にジェノロップスの足元に潜り込んでいた。  ユキナは潜り込んだ位置から高いSTR値(筋力値)に幅を利かせ凄まじい跳躍をする。  それと同時にバスターソードを水平に構えジェノロップスを下から上へ斬り上げ、最後に落下の勢いで左肩から左足の膝まで縦一文に斬りつけた。 『グッ……オォォォ……』  その攻撃でジェノロップスの頭の横に表示される三本のHPバーから一本が消える。 「マジかよ……」  決してユキナの持つ武器≪バスターソード≫の攻撃力が高いわけではない。バスターソードなんて拠点でギルさえあれば大量に買える市販の武器だ。性能が悪いわけではないが、ジェノロップスみたいな中ボス級のモンスターのHPバーを二撃で一本刈り取るほどの性能はない。  ……多分、俺が想像している以上にユキナのSTR値(筋力値)は高いのだろう。
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