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「静かに。【―ハイド―】」
色んな意味で興奮して熱くなる俺を静めるように、彼女は冷静に一言。そしてローブの留め具に付いた小さな緑色の宝石を触り音声によるスキル発動を行った。
このBBLに魔法はないが特殊スキルがあり、特殊スキルが装備に付与されているものがある。
この【―ハイド―】もそのスキルの一つで、効果は三十秒だけモンスターのターゲットから外れることができる。
成功率は対象モンスターによりけりだけど、今回みたいに知力の低いジェノロップスなどには効果ありだ。
「近くの物陰まで移動する」
いまだローブに入ったままだが、彼女がスキルを発動させた瞬間になんとなく彼女の意図することが読めてきた。
抵抗することなく彼女に従うまま静かに移動し、近くの半壊した小さな遺跡内に隠れる。
このままいけば、ジェノロップスのターゲットから外れてログアウトもできそうだ。
次回ログインするときも場所はここになるけど、ジェノロップスは流石にいなくなっているだろう。
「あ、あ、ありがとう。助かりました」
左上に映る自分のHPバーの横にターゲットのマークがなくなっていることを確認した瞬間に亀裂から飛び出る水の如く勢いでローブの中から出て、身体だけ彼女の方に向けて地面を見つつお礼を言う。
いや、お礼を言うときは最低限のマナーとして相手の目を見て言う必要があるのは頭で理解しているけど、さっきの柔らかな感触がフラッシュバックして恥ずかしくて直視できない。
「いいえ、大したことじゃないから」
チラリと視線を前に向けると彼女は会話をする俺の方には目もくれずに、メニューウインドウを触っている。
装備をいじっているのか、彼女の纏っていた≪盗賊のローブ≫が消え、変わりに彼女の身の丈ほどある大剣≪バスターソード≫が背中に出現する。
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