起動

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「何てことしてくれるんだ!?」  そう叫んだ時にはもう、助けてくれた恩義なんて頭から消え去っていた。むしろ、上げるだけ上げた後に叩き落とされた気分だ。  彼女が言葉足らずで意図を計りにくいのは、さっきまでの会話の流れで重々承知だ。だけど、これは本当に意味がわからない。 「……何が?」 「『何が?』じゃねぇぇぇぇえ!! いまっ!! 石!! 投げた!!」 「ん? パーティー組んでいるから、横殴りにはならない……でしょ?」  その言葉で、俺と彼女の考えがすれ違っていることに気が付く。 「……は? え、じゃあ、俺とパーティー組んだのって……」  人助けのクエスト達成の条件とかじゃなく、もしかして、最初っから……。 「あのモンスターを倒すため。この間、怒られたの『人が狩っているモンスターを攻撃するのは横殴りだ』って。でも、パーティーを組めば報酬はお互い貰えるのでしょ? なら、問題ない」  横殴り。モンスターと戦っている最中に、自分とは仲間でもない無関係の人がそのモンスターに攻撃する事だ。  経験値やドロップアイテムの分配システム等の関係で、狩り効率の低下や、気分的な問題でトラブルになりやすい。  まぁ、だから、横殴りはやっちゃいけないってのがMMOでの暗黙のルールだ。
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