第1章

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「でも、なんでしょうね」 女性に話しかけると困ったようにではあったけど返事が返ってきた 「そうですね… 線路に動物でも入ったんじゃないですか? 私の地元ではたまにそういうことがありましたけど」 「動物ですか? 俺はずっとこの辺に住んでたからそんなのには出くわしたことないですね」 「私の地元ではたまにありましたよ 止まれなくてひいちゃったりとかもあったみたいですけど」 思いがけずに話が続き、2人で電車がまた動き出すまで話していた 電車が動き出すと女性は少し寂しそうな顔で俺を見た 「私、明日引っ越すんですよ」 いきなり言い出して俺が反応に困っているうちに女性は話を続けた 「私は会社でもそんな目立つ方じゃなくて友達とかも少なかったんです それで転勤の辞令が出たときも特に寂しいって思わなくって なんかそれも虚しいなーって考えてるときあなたと話して、この人と仲良かったら寂しいって思ってくれただろうし、思っただろうなって」 照れくさくなったのか途中から下を向いて話す女性の頭に俺は無意識のうちに手を置いていた 驚いたように目をあげた女性に俺は小さく笑いかけた 「もし、俺とあなたが同じ会社で働いてたとしたら、あなたが転勤になったときは寂しいく思うでしょうね 俺は毎朝あなたがこの電車のこの車両に乗ってくるのを楽しみにしてるんですから 明日からそれを見られないのは充分寂しいことですよ」 俺の話を聞いて、女性はふわっと笑った 「私たち、似た者同士かもしれませんね」 「え、それはどういう、」 「あ、私ここで降りるので こっちの会社での最後の出勤いってきます」 俺の質問を遮り、楽しそうに笑って電車を降りていった女性を見送り、俺はまた窓の外を見た 「似た者同士、か」 俺は呟くと小さく笑った 彼女も毎朝俺のことを見ていたのかもしれないなと考えながら俺は電車に揺られていた
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