英雄の盾

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 気付けば瞑っていた。時折、開けているのか閉じているのかわからなくなるのだ。わたしは目を擦り、それから、やはり扉のある付近を見やる。  そこが開けば、わたしは自由になれる。  しかしそれは淡い夢だ。もっと言えば、先ほどの幻想の残り香に過ぎない。そもそもわたしはそれが容易に開くことを、はじめから知っているのだ。  ☆ ☆ ☆   真夜中、例の開かずの扉はこともなく開く。わたしは明確な覚醒でもってその来訪者を出迎える。一切眠くはない。その為に昼寝ばかりしているのだ。男たちは灯りと椅子とを持ってぞろぞろと入ってき、わたしはその強い灯りに目をやられながらも、何とか人数を数えきる。……今日は八人、まず平均と言っていいだろう。 「まーだーよー、はいっ! まーだーよー」  聞き慣れた声が一室へ飛び込んでき、血気盛んな八人を速やかに統率する。その持ち主の看守長は、いつも最後に現れるのだ。  看守長は扉を閉めて大きく伸びをしたかと思うと、幾分大袈裟に、その屈強な男たちを押しのけ、未だベッドに座っていたわたしを手に持っていたランタンで照らす。暗闇に慣れていたわたしは当然たまらない、が、黙する。文句を言ったところで話の通じないことはわかっていた。 「んー? 元気だったぁ? 元気だったぁん? さんびゃくさんじゅう、ろくばーん?」  その質問にも、わたしは当然ながら答えない。それは質問以前に、わたしへ問われたとすら言えない。一体、その数字はどこから出てきたのか?
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