英雄の盾

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 ややあって彼が断りを入れ、わたしは頷く。彼は自身の中では強く、それでも先ほどの八人の中では誰よりも弱く腰を動かし、わたしはなるだけ膣圧を強めてあげる。彼は自身の中では深く、それでも先ほどの八人の中では誰よりも浅く射精し、わたしは歯を食いしばって腰をあげ、子宮内へ注がれるようにきちんと口をくっつけてあげる。  ……これはちょっとしたお手伝いだ。彼が挿入する前からわたしの性器には八人分の精液がたっぷりと入っている訳だが、彼はいつも前に拭かない。必ず汚れたままのわたしへと挿入して、はじめの頃はそれがどうしても疑問だった。全部拭えるとは思わないが、ちょっとくらい綺麗にしてからの方が彼も気持ちよく行えるのではないか、という純粋な疑念。大量の精液は空気を含んで彼が突く度に酷い音を立てるし、そんな音を聞きながらでは折角のわたしの演技もかえって興を削いでしまうに違いない。にも拘わらず、彼は拭わない。その内心を悟ったのは、それから随分あとのことだった。  彼は純然に、その男たちと戦っているのだ。この男はわたしが汚れているのを知った上で、それでも尚最も汚せればいいと願っている。
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