英雄の盾

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 開いた先はちょっとした広間になっており、すぐ左手に階段がある。わたしはその階段に連れられてのぼる。正面にも通路は続いていたが、そちらには行ったことがないか、もしくは記憶がないかのどちらかだ。わたしは既に、どうやってここへ連れて来られたのかすら覚えていない。  階段の踊場にはそこかしこに窓がついているが、何時も分厚いカーテンに遮られており陽光に当たることはない。その代わり昼間でも灯りが焚かれており、わたしはその幾重にも切り返された階段をあがっていく、その最上階に、看守長の一室はあった。  右の男が扉をノックし、「どんぞーん!」とは看守長の声、左の男が怖ず怖ずとドアを開き、「失礼致します、ただ今七十三番をお連れしました」と頭を下げた。次いで、仄暗い部屋から声だけが聞こえた。
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